土壌試料に炭素源を加えると資化に伴う発熱が起こる。その過程(サーモグラム)は土壌と炭素源とによって特徴的であり、その解析から土壌の微生物性の評価が可能となる。この原理に基づいて、(1)土壌試料採取の時期と採取深さ、および採取試料の長期保存が土壌の微生物性に与える影響の解析、および(2)土壌微生物の機能多様性解析法の開発を行った。 (1)同一箇所の、季節および表層からの深さを異にする畑土壌試料に糖やアミノ酸など18種の炭素源を単独で加えた際の発熱過程を比較した。一部例外的に異なる特徴を示す試料があるが、全体としてほぼ同一であった。また、室温、冷蔵、冷凍で10か月保存した畑土壌試料に18種の炭素源を加えて熱測定したところ、室温で5か月以上保存した試料は明らかに異なる挙動を示した。これらの結果より、採取の時期と深さは揃えるのが望ましいこと、また採取試料を低温で保存すれば、10か月までは新鮮な土壌試料と同等と見なしうることが示された。 (2)畑、果樹園など、計13種類の土壌を用い、41種類の炭素源をそれぞれ単独で加え、サーモグラムを得た。すべてのサーモグラムについて、発熱速度が最も大きくなる時間の平均時間における発熱量を評価した。この値を用いて、シャノン指数およびシンプソン指数により各土壌の機能的多様性を評価できた。また、各土壌からゲノムDNAを抽出し、PCR-DGGE法によるゲルのバンド数とバンド強度から、一般細菌叢の種の多様性をシャノン指数とシンプソン指数により評価した。この結果、機能的多様性と種の多様性には相関はなく、熱測定法では種の多様性とは異なる土壌微生物性の多様性の一側面を評価していることが示された。
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