本研究は、インド・タミルナードゥ州のため池灌漑地域を対象として、かつて貧困削減を目的として導入されたものの、その急速な占有面積拡大が現在大きな問題となっている、マメ科灌木プロソピス(Prosopis spp.)を視点の中心として研究を進め、インド半乾燥地域の農村地帯における今後の発展径路を描き出すことを目的とする。 平成23年度は、プロソピスを発電資材として利用している、調査対象村近郊の発電所において、聞き取り調査を行った。その結果、主に都市部におけるエネルギー需要の増大を契機として、インド政府が2003年に制定した電力法により、発電事業の民営化が進展するとともに、石炭よりも単位価格あたりのエネルギー量が大きいプロソピスが、火力発電所において発電資材として用いられるようになったこと、このような需要の増大を背景として、2003年から2009年にかけてプロソピスの市場価格が実質で2倍以上に上昇していること、などが明らかになった。また、調査村の農地におけるプロソピス被覆面積は、2000年からの10年間で2.5倍強増加したが、プロソピス被覆面積の拡大は、プロソピスの伐採権料および伐採作業の増加をもたらしており、結果として、調査村における世帯収入の増大につながっていたことが明らかとなった。以上の点から、プロソピスの拡大は水資源利用の増大を伴わずに農村の貧困削減につながる可能性が示唆され、この結果を国際ワークショップにて発表した。
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