研究概要 |
石油資源の枯渇と地球温暖化問題への対応が急がれている中で、木質系バイオマスは、食糧と競合しない循環型のバイオマス資源として、その変換利用に社会的要請が高まりつつある。担子菌類に属する白色腐朽菌は、木材中に存在する難分解性の高分子リグニンを分解する能力を持っており、その特有の酵素群を大量に調整しリグノセルロースの糖化の際に併せて用いることができれば、前処理に必要とされるエネルギーや酸などの環境負荷を大きく低減することが期待されている。本研究は、白色腐朽菌のリグニン分解酵素生産のメカニズムについて分子生物学的なメスを入れることを目的とする。本年度は、昨年度までに確立した選択的リグニン分解菌における、染色体上への組込み位置やコピー数による影響を受けない一過性の遺伝子発現系を用いたプロモーターアッセイ系の評価を行った。gpd遺伝子は、解糖系の鍵酵素(glycelaldehyde-3-phosphate dehydrogenase)をコードしており、転写量の高いハウスキーピング遺伝子として知られている。本研究では、選択的リグニン分解菌Ceriporiopsis subvermisporaのgpd遺伝子プロモーターからの転写開始に必要となる塩基配列を明らかにするために、1233~0bpに至る様々な長さのプロモーター領域を持つ14株からなる欠失シリーズを作成し、ハイグロマイシン耐性遺伝子の発現を行わせることによって、転写開始活性を比較した。その結果、基本的な転写開始には翻訳開始点の上流141bpが必須であることが明らかになった。次にこの領域の塩基配列をin silicoで解析したところ、TATAA box,CT-rish motifの他、真核生物の転写においてしばしば観察されるSp-1,AP-1,GCN4結合配列、などが存在していることが明らかになった。現在これらの配列の重要性を評価するため、様々な変異株を作成中である。
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