研究概要 |
担子菌類に属する白色腐朽菌は、木材中に存在する難分解性の高分子リグニンを分解する能力を持っており、その特有の酵素群を大量に調整しリグノセルロースの糖化の際に併せて用いることができれば、前処理に必要とされるエネルギーや酸などの環境負荷を大きく低減することが期待されている。本研究は、白色腐朽菌のリグニン分解酵素生産のメカニズムについて分子生物学的なメスを入れることを目的とする。本年度は、昨年度までに確立した選択的リグニン分解菌における、染色体上への組込み位置やコピー数による影響を受けない一過性の遺伝子発現系を用いた最小プロモーター領域内のcis配列の重要性の評価を行った。gpd遺伝子は、解糖系の鍵酵素(glycelaldehyde-3-phosphate dehydrogenase)をコードしており、転写量の高いハウスキーピング遺伝子として知られている。本研究では、選択的リグニン分解菌Ceriporiopsis subvermisporaのgpd遺伝子プロモーターからの転写開始に必要となる塩基配列を明らかにするために、基本的な転写開始に必要であることが明らかとなった翻訳開始点の上流141 bp内に存在するTATAA box, CT-rish motif, Sp-1, AP-1, GCN4結合配列内に部位特定的な変異株を作成し、転写活性を測定した。その結果、GCN4、AP-1結合コンセンサス配列とTATAA-boxに変異を入れた時に、プロモーター活性が著しく低下するという結果となった。従って、これらの配列が転写の開始に重要であることが明らかとなった。これらの結果は、担子菌における初めてのプロモーター配列解析となった。さらに、国産の重要な白色腐朽菌であるヒラタケにおいてGFPの導入・発現に成功した。これは、同菌において初めてのレポーター系の開発となった。
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