研究概要 |
PNGaseは糖タンパク質からN-型糖鎖を遊離させる酵素であり,異常糖タンパク質の品質管理機構(ERAD)に関わる分子として注目されている。しかしながら,酵素活性を簡便かつ定量的に解析可能な合成基質はなかった。本研究ではPNGase活性を定量的に解析するための合成基質を化学的に調製することを目的としている。本年は,キトビオース構造をベースとしてPNGaseによる糖鎖認識能を失うことなく蛍光標識可能な部位を決定するために,還元末端にアジド基を,非還元末端の4位にプロパルギル基を有するキトビオース誘導体の合成を実施した。1)単糖グルコサミン誘導体の4位に対するプロパルギル基の導入を検討したところ,TIPS基でアルキンを保護することで目的物が収率よく得られることを見いだした。得られたプロパルギル基を有する単糖を糖供与体とし,グルコサミン誘導体とのカップリング条件を種々検討した結果,目的とするキトビオース構造の構築に成功した。一方,キトビオース構造を先に構築後,4位に対するプロパルギル化を行うことにより,目的とした2糖の合成が可能であることを確認した。2)2糖キトビオース誘導体の脱保護反応および官能基変換を検討した結果,DDQによる酸化的脱ベンジル化反応により,アジド基およびプロパルギル基を傷めることなく目的物が得られることを明らかにした。3)還元末端部分へのアスパラギン酸の導入は,Bu_3Pを用いたシュタウディンガー反応により,目的物が得られることを確認した。4)キトビオース誘導体の4位に対して,アジド基を有するDansyl基の導入を行った結果,2糖誘導体でもクリック反応により,蛍光性置換基の導入が可能であることを確認した。以上の検討により,キトビオース誘導体をベースとして,糖アミノ酸のグラムスケールでの合成が可能であること,および蛍光標識が可能であることを明らかにした。
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