研究概要 |
PNGaseは,異常糖タンパク質の品質管理機構に関わる分子として注目されていが,酵素活性を簡便かつ定量的に解析可能な合成基質はない。本研究ではPNGase活性を定量的に解析するための合成基質の調製を目的としている。昨年度,キトビオース構造をベースとし,還元末端にクロロアセタミド基を,非還元末端側の4位にプロパルギル基を有するキトビオース誘導体の合成をおこなった。本年度は,プローブの大量合成法と,得られたプローブを用いたPNGase阻害実験および活性検出を試みた。グルコサミン供与体150gを合成後、うち20gを用いて還元末端にアジド基を導入,糖受容体とした。得られたアジド誘導体とグルコサミン供与体をカップリング,キトビオース誘導体を20g合成した。TIPS基で保護したプロパルギル基を導入,プロパルギル基を有するキトビオース誘導体を1g合成した。酸化的脱ベンジル化反応を検討し,MnO_2を添加することで,DDQの使用量を大幅に減らすことができた。クロロアセチル基を還元末端に導入,目的のプローブを100mg合成した。得られたプローブを用いて阻害実験をおこなった結果,RNaseBを基質としたPNGaseの脱糖鎖活性をμMオーダーで阻害することを確認した。一方,PNGaseとプローブを反応させた後に,クリック反応により蛍光性置換基を導入した。この結果より,タンパク質上のアルキンに対しても蛍光性置換基を導入,酵素活性を有するPNGaseのみを選択的に検出できることを示した。また,あらかじめクリック反応によりダンシル基を導入したプローブもPNGaseを阻害することを確認した。また,糖アミノ酸ユニットの合成は,還元末端のアジド基を還元,アミノ基とした後にアスパラギン酸無水物と反応することで,縮合剤を用いることなく,目的物が得られることを確認した。
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