研究概要 |
平成22年度には,植物酵素としては最初の例となるトマトα-マンノシダーゼ(Man'ase)の遺伝子同定と酵母による本酵素の大量発現系の構築に成功し,詳細な基質特異性,金属要求性等を明らかにした。本酵素は,ネイティブ酵素と同様に植物パウチマンノース型及びハイマンノース型糖鎖に対して活性を示し,弱酸性(pH6.5)に至適pHを有することから,液胞などの酸性オルガネラではなく,細胞壁等の弱酸性オルガネラに存在し,タンパク質に結合するN-グリカンあるいは遊離N-グリカンの分解に関与することが示唆された。一方,そのアミノ酸配列相同性を基に,既にX線結晶構造解析により立体構造が明らかになっているヒト酸性α-Man'aseをモデルとして立体構造解析を行い,分子モデリング法によりα-Man'aseの基質結合ドメインと触媒ドメインを明らかにするとともに,触媒残基を推定した。更に平成22年度には,果実熟成と糖鎖代謝機構との関連を明らかにすることを目的として,トマト果実の各熟成段階と熟成変異株における糖鎖代謝酵素群(ENGase,PNGase,α-Man'ase,β-Hex'ase)の遺伝子発現解析及び遊離N-グリカンの構造特性解析を行った。その結果,ENGase,PNGase,β-Hex'aseは完熟果実での発現量が多いのに対して.α-Man'aseは緑熱期での発現量が多く,上記α-Man'aseは果実熟成期における糖タンパク質糖鎖代謝で重要な機能を担っていることが推察された。一方。熟成変異株においては,全ての糖鎖代謝酵素遺伝子の発現が著しく抑制されていることから,果実熟成変異と糖鎖代謝酵素群の遺伝子発現には相関があることが明らかになった。
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