研究概要 |
平成23年度には,ミスフォールド糖タンパク質からの糖鎖遊離を司るendo-β-N-acetyl glucosaminidase (ENGase)あるいはpeptide : N-glycanase (PNGase)遺伝子をノックアウトさせたアラビドプシスを作成し,それぞれの変異体中に発現される遊離糖鎖の構造解析とENGase及びPNGase活性の検定を行った。その結果,ENGase遺伝子ノックアウト株(2種ENGase遺伝子のダブルノックアウト)では,ENGase活性の完全消失に伴い,内在性PNGaseにより生成した遊離糖鎖のみが発現されていることが確認された。この結果は,ミスフォールド糖タンパク質からの糖鎖遊離は,ENGase活性が抑制されていても,PNGase活性により補償されていることが明らかとなった,一方,PNGase遺伝子ノックアウト株に発現される遊離糖鎖は,ENGase活性により生成された構造を有していた。この結果は,「PNGaseによるタンパク質からの糖鎖遊離がENGase作用に先んじて起こり,ENGase活性は遊離糖鎖の還元末端構造のプロセシングにのみ関与する」とされている動物細胞での概念とは異なる機構が植物では機能することを示すものであった。ENGase/PNGase遺伝子の発現抑制植物では,発芽後の植物生育には顕著な違いは見られなかったが,今年度までに構築した遺伝子抑制植物では,構造特性の差異はあっても遊離糖鎖そのものは生成されているため,遊離糖鎖の生理機能を明らかにするためには,両酵素遺伝子のダブルノックアウト植物を作成することが必要である。この点については,既にENGase/細胞質PNGaseのダブルノックアウト植物(アラビドプシス),ENGase/細胞質ENGase/酸性PNGaseトリプルノックアウト植物の作成を進めているところである。また,トマトについても,RNAiによるENGase遺伝子発現抑制植物の作成に成功し,トマト果実中に発現される遊離糖鎖の構造解析を行うとともに,ENGase活性の完全消失を確認した。変異トマトでは,ある環境条件下において,果実熟成過程に特徴的な形態変化が見られた
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