研究概要 |
末端アルキンをPd(II)、TMSCNと酸素ガスで処理すると1,2-ジンアノ化が円滑に進行する事を見いだした。この前例のない分子変換プロセスには従来まで知られていなかったアルキンへのCN基の付加反応が含まれる。詳細な実験から、求電子的に活性化さたアルキンにシアノ基が末端炭素からシン付加する機構とマルコフニコフ則にしたがい内部炭素ヘアンチ付加する機構を提唱するに至った。いずれも前例のない素反応でありシアノパラデーションと命名した。 筆者らが見いだしたシアノパラデーションの応用展開を精力的に行った。共役エンインを基質に用いると位置選択的にアルキン末端sp炭素にシアノパラデーションが進行する事を見いだし、生じるパイアリル中間体を分子内のオレフィンでトラップする事で前例のない[4+2]環化付加反応へ展開した。本系では、一度に4つの炭素炭素結合が形成可能であり、多官能基化されたシクロヘキセン誘導体を収率よく与える。また生じる立体中心も高度に制御が可能であり、最高で5連続立体中心の完全制御が実現できた。反応機構の詳細な検討から、立体選択性の根源もほぼ解明でき、今後の新たな展開が期待できる。 エンインを基質に用いた場合、基質構造のわずかな違いで環化様式が大きく左右される事も見いだした。通常のエンインでは、5-exo環化が優先し3回の炭素炭素結合生成を経てジシアノ環化体を収率よく与える。一方、α置換のアクリルアミドでは6-endoが優先し4置換炭素を含むラクタム体を与えた。オキソパイアリル中間体を経るために、原料オレフィンの立体化学は生成物に反映されないことがわかった。
|