前年度までに合成した新規複素環骨格「ジアザベンゾトロポン」誘導体について、その化学反応性を精査したところ、アミン類等の求核剤と素早く反応し、加熱によって定量的に脱窒素反応が進行することが見出された。アミンとの反応は室温下で瞬間的定量的に進行し、付加生成物の形成がスペクトル解析により確認された。これは、ジアザベンゾトロポン骨格の電子欠損性に起因するものと考えられる。この付加体は室温下で安定であるが、温和な加熱条件にて窒素分子の放出を伴ってインダノン誘導体を与えた。これらの知見は、ジアザベンゾトロポン誘導体が求核性分子種(例えば生体内のタンパク側鎖や核酸塩基など)と強い相互作用を起こすことで、何らかの生理作用を発現することを強く予感させる結果といえる。一方で、当初目論んでいたこれら誘導体のAMPAレセプターアンタゴニスト活性の評価を実施したところ、期待していたアンタゴニスト活性は認められなかった。これまでの報告では、類似した骨格化合物によるAMPAレセプターアンタゴニスト活性発現には1位アリール基上のアミノ基の存在が重要であることが示唆されているため、現在カップリング反応等によるアミノ置換基の導入について検討を行っている。また、本評価系において、これら化合物群が顕著な細胞毒性を示すという結果も得られている。そこで、いくつかの腫瘍細胞を用いた細胞毒性調査を進めるべく、現在準備中である。その結果次第で、ジアザベンゾトロポン誘導体の抗癌性化合物としての有用性を検証していく予定である。
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