本研究で合成に成功した新規複素環化合物、「ジアザベンゾトロポン」類のAMPAレセプターアンタゴニスト活性を精査するため、1位のアリール基上にアミノ基を有する誘導体合成について検討を行った。本目的を達成するため、遷移金属触媒下でのクロスカップリングアミネーションを用いることとし、その原料化合物となる1-ヨードフェニル置換ジアザベンゾトロポンの合成を、本研究で開発した連続的電子環状反応を用いることで達成した。しかしながら、引き続くアミノ化反応は、種々カップリング条件を試みたが母核の分解反応が優先して進行してしまい、目的の達成には至らなかった。 一方、これまでに見出しているジアザベンゾトロポン類の細胞毒性作用について詳細な検討を行ったところ、一部の誘導体において顕著な抗癌作用が期待されることが判明した。ヒトリンパ腫細胞を用いて、これまでに合成したジアザベンゾトロポン誘導体ライブラリーの抗癌活性スクリーニングを実施したところ、1位アリール基のパラ位にメチル基を有する誘導体において、最も強力な抗癌作用が確認された。なお、抗癌作用は細胞のアポトーシス誘導を指標として評価を行った。この結果を踏まえ、更に誘導体化を進めたところ、パラ位に更にかさ高い置換基(イソプロピル基)を導入した誘導体において、活性の更なる向上が認められた。 以上、オリジナルな手法にて初めて合成されたジアザベンゾトロポン類が、新規抗癌剤シーズとして期待されるという知見を得ることに成功した。今後、更なる構造活性相関研究を進めたい考えである。
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