研究概要 |
1ビスアレン誘導体の新規環化付加反応の開発 適当な長さの炭素鎖で連結したビススルホニルアレンを窒素雰囲気下,トルエン中1価ロジウム触媒存在下に加熱すると,単環性交差共役トリエン体が収率良く得られることを見出した。本反応ではまず,両アレン末端二重結合間でローダシクロペンタンを形成後に[1,5]-水素シフトが起こり,ロジウムの還元的脱離を経て最終生成物が得られると考えられる。既存の環化異性化反応では見られない[1,5]-水素シフトの進行が鍵であり,この工程が起こりやすい中員環の構築に適していることが本反応の特徴である。鎖状化合物から8あるいは9員環といった中員環化合物を合成するのは通常困難であること,得られる生成物にはトリエン構造やメルホニル基のような変換容易な官能基が存在することから,本反応は中員環構造含有天然物の合成に有用であると考えられる。 2アレンとシクロプロパンを反応構成成分とする新規環化付加反応の開発 分子内にアルキンとアレニルシクロプロパン構造をもつ鎖状基質をトルエンまたはジクロロエタン中,1価ロジウム触媒と処理すると,アレン末端二重結合とそれに直結したシクロプロパン,及びアルキンが関与した[5+2]環化付加反応が進行し,ビシクロ[5.4.0]ウンデカトリエン誘導体が収率良く得られることを明らかにした。本反応は,80℃程度の加熱で速やかに完結するが,室温でも適度な反応速度で進行する。また,本法はビシクロ[5.5.0]ドデカトリエン誘導体の合成にも適用可能である。 3アレンのPauson-Khand型反応を基盤とする天然物合成 Cyanosporaside類のコア構造の効率的合成法を確立した。
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