研究概要 |
不斉ビギネリ反応を触媒するキラルヒドラジン、ヒドラジド触媒の探索を行い、(S)-N-アミノピログタミン酸誘導体がビギネリ反応を触媒し、20%eeで目的とするジヒドロピリミジノン類を与えることを見出した。ヒドラジン型(ヒドラジド型)の不斉触媒としてはカンファー骨格を持つものしか報告されておらず、20%eeと不斉誘導効率は不十分であるが、入手容易なアミノ酸から簡単に合成できるヒドラジド触媒が不斉触媒として機能することを明らかにできた。ヒドラジンは一般にα-ヘテロ原子効果により類似のアミン類よりも高い求核性を持つとされている。一方、我々のグループでは同じ環状ヒドラジンでもピラゾリジンが1,2-ピペラジンよりも高い求核性を持つことを見出している。精密な触媒設計を行うためにこの差がどうして生じるのかを分子軌道計算を用いて検討した。その結果、ピラゾリジンはローンペア間の二面角が60度となる配座が最も安定であったのに対し、ピペラジンではその配座は最安定配座よりも1.5kcal/mol不安定な配座として存在することが明らかとなった。ローンペア間の二面角が60度の場合、ゴーシュ効果により最も分子が安定化される。このゴーシュ効果と求核性との関連は明らかではないが、このような最安定配座の違いが求核性の差に反映されているのではないかと考え、実験的にそれを証明するための反応系の探索を行ったが、現時点ではこの目的にあった反応系は見いだせていない。また、他の不斉反応への展開として不斉Diels-Alder反応の検討を行ったところ、4,5-ジフェニル-1,3-ジアミノイミダゾリジノンはシクロペンタジェンと桂皮アルデヒドのDiels-Alder反応を効率良く触媒し、Diels-Alder付加体を89%ee以上の光学純度で与えることを明らかにした。
|