研究概要 |
不斉ビギネリ反応に関しては、前年度の検討結果を踏まえ、引き続きアミノピログルタル酸誘導体を種々合成し、最適な反応条件の探索を行なったが、20%eeを超える不斉収率を得る事はできなかった。一方、不斉Diels-Alder反応の触媒開発については、4,5-ジフェニル-1,3-ジ(イソプロピルアミノ)ミダゾリジノンを触媒として用い、シンナムアルデヒドとシクロペンタジエンの不斉Diels-Alder反応の反応条件の最適化を行ったところ、DMF溶媒中、0度で反応を行なうと4時間で反応は完結し、89%eeでDiels-Alder付加体を得る事に成功した。他のα,β-不飽和アルデヒドを用いた不斉Diels-Alder反応を検討したところ、78%ee~96%eeと十分高い不斉誘導効率で反応が進行する事が分かった。一方、触媒中心近傍の不斉環境が全く同じであるにも拘らず、4-フェニル3-イソプロピルアミノオキサゾリジノンでは16%eeと不斉収率は非常に低いものであった。このような差が生じる原因を明らかにするために、活性中間体であるイミニウムイオンの立体配座解析を各種NMR測定、分子軌道計算を用いて行なったところ、4,5-ジフェニル-1,3-ジ(イソプロピルアミノ)ミダゾリジノンの2つの触媒中心が同時にイミニウムイオンとなる場合、イミニウムイオンは不斉誘導に好適な配座を優先的にとる事が分かった他、オキサゾリジノンベースの触媒ではそのような配座の優位性が大きく低下するために、不斉誘導効率が大きく低下する事が明らかとなった。
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