研究概要 |
N,N'-ジアミノイミダゾリジノン触媒の触媒効率向上を目的として、種々の置換基を持つジアミノイミダゾリジノン類を合成し、その触媒効率を検討した。その結果、立体反発の小さい置換基を窒素上に導入すると、予想通り触媒の反応性は高まったものの、不斉誘導効率は大きく低下した。一方、イミダゾリジノン環上の置換基を変えた場合、予想に反して不斉誘導効率の大きな変化は見られなかった。この結果から、本触媒系ではイミニウムイオンの面の遮蔽にではなく、他の要因が不斉誘導に大きく関わっていることが推測される。N-アミノオキサゾリジノン型触媒に関しても種々の置換基を持つものを合成し、その不斉誘導効率、触媒活性の検討を行った。オキサゾリジノン型触媒では置換基が立体的嵩高さが反応速度に大きく影響し、かさ高い置換基を持つものでは、著しく触媒活性が低下した。また、単にかさ高い置換基を導入しただけでは、不斉誘導効率は60%ee程度に留まったのに対し、側鎖にフッ素原子を導入し、ゴーシュ効果による配座の固定を試みたところ、87%eeまで不斉誘導効率が向上することが解った。また、これらの結果を解析するために、イミニウムイオン中間体の配座解析を行った。その結果、定性的には実験結果を説明できる結果が得られたものの、定量的には不完全なものであった。この原因として、ここで行った計算では対イオンの効果が加味されていないことが挙げられる。また、不斉ビギネリ反応に関してはこれまでに合成したジアミノイミダゾリジノン、アミノオキサゾリジノン型触媒のほかに、N-アミノプロリン誘導体などを用いて検討を試みたが、20%ee以上の不斉誘導効率を得ることはできなかった。この原因を明らかにするために分子軌道計算により、エナミン中間体の配座解析を行ったところ、窒素-窒素の結合の自由回転が十分制御されていないことが解った。
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