インドール骨格はセロトニンやトリプトファンなどの生体内物質や、インドメタシンに代表される医薬品の重要な部分構造である。本申請研究では平成21年度までに、分離・回収が容易で再利用が可能な不均一系パラジウム炭素を触媒とする芳香族ヨウ素あるいは芳香族臭素化合物とアミン類とのクロスカップリングに基づく芳香族アミノ化反応の基本条件を確立している。また、同一分子内に芳香族臭素と第一級アミンを併せ持つ2-ブロモフェネチルアミンを基質とすると分子内で芳香族アミノ化反応が進行し、インドリンを経てインドールが生成することも見いだしている。平成22年度は、このインドール形成反応を詳細に検討した結果、メシチレン中200℃で加熱するとインドールが、また140℃ではインドリンがそれぞれ単一の生成物(それぞれ95%の単離収率)として得られることを明らかとした。今後は官能基を有する2-ブロモフェネチルアミン誘導体を基質とすることでインドリンあるいはインドールの選択的合成法としての一般性を確立すべく条件を精査する。また、含窒素複素環と芳香族ハロゲン化合物とのカップリングについて、インドールとブロモベンゼンを用いて検討したところ、対応するN-フェニルインドールが高収率で得られた。さらに3位あるいは5位がメチルあるいはメトキシ基で置換したインドールおよびブロモピリジンが本N-アリール化に適用可能であることも明らかとなった。このN-アリール化は2-ブロモフェネチルアミンの分子内アミノ化反応と組み合わせることも可能であり、分子内アミノ化反応の途中でブロモベンゼンを添加すると閉環-芳香化成績体であるインドールの窒素原子上にフェニル基がワンポットで導入されることを見いだした。平成23年度はN-アリールインドール誘導体の一般合成法として確立するとともに、インドール以外の含窒素複素環のカップリングを検討する。
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