研究概要 |
最近のBuchwald-Hartwig反応に関する研究では、触媒活性の向上を目的として、リガンド開発に重点が置かれている。これらリガンドは不安定で有毒なものが多く、殆どが市販されていない。さらに旧世代のリガンドも依然として高価である。もしリガンドを必要としない反応系が構築できれば、環境調和型反応として、工業的実用性も向上する。リガンドを使用しない反応を開発するに当たり、まずリガンドの減量を試みた。10%Pd/C(2mol%)を触媒とする、プロモベンゼンを用いたモルホリンのN-フェニル化について沸騰CPME(cyclopentyl methyl ether)中、dppf[1,1'-bis(diphenylphosphino)ferrocene]を3mol%から段階的に減量したところ、1mol%以下では反応性が著しく低下した。そこで、パラジウムへのリガンド様作用を期待して配位性の高い高沸点溶媒であるジブチルエーテル(沸点142℃)及びDMPU[N,N-dimethylpropyleneurea、沸点146℃(44mmHg)]中で検討した。沸騰ジブチルエーテル中ではdppfを添加しないと反応がほとんど進行しないのに対し、DMPU中では220℃で50%の収率で対応するN-フェニルモルホリンを得ることができた。3.0mol%のdppf添加でもほぼ同様の収率(52%)であったことから、リガンドフリーでも反応が進行することが明らかとなった。また、ブロモベンゼンによるp-トルイジンのモノフェニル化では、ジブチルエーテル中リガンドフリーで対応するジアリールアミン誘導体を48%の収率で合成することができた。以上、高沸点で配位性の溶媒中、Pd/Cを触媒とするリガンドフリーBuchwald-Hartwig反応が中程度ではあるが進行することが明らかとなった。
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