研究概要 |
本申請研究ではPd/Cに代表される不均一系白金族触媒による接触還元及び鈴木-宮浦反応を無溶媒反応として確立することを目的としている。 平成21年度の研究で、「無溶媒(固相-固相-気相)接触還元反応」に関しては、アルケン、アルキン、ニトロ、エポキシド、N-Cbz、ベンジルエーテル、ベンジルエステルなど,様々な還元性官能基を有する多様な基質に対する一般性を確立した。平成22年度は固相接触還元反応におけるPd/C以外の不均一系白金族触媒(Pt/C, Ru/C, Rh/C, Pd/アルミナ, Pd-black等)や触媒の製造元並びに形態の違い(乾燥品とwetタイプ)による触媒活性や反応性の差違を詳細に検討した。その結果、いずれも、液相での接触還元反応における触媒活性と同等であることを確認した。これまでの2年間の研究により、液層中での激しい混合撹拌が必須であると考えられてきた接触還元反応が、実は、還元性基質と固体触媒を水素雰囲気下混合するのみの固相条件で、効率的に進行する事が明らかとなった。 一方、無溶媒(固相-固相-固相)鈴木-宮浦カップリング反応に関しては、平成21年度の研究で、固体無機塩基存在下、Pd/Cと固体試薬(芳香族ハロゲン化合物と芳香族ホウ素化合物)を80~100℃で撹拌するのみで70%程度の収率で反応が進行することを明らかとしたが、本年度の検討により、収率が70%程度にとどまるのは基質の昇華が原因であることを突き止めた。この知見に基づいて種々検討した結果、密封バイアル中で無機塩基、Pd/Cと固体試薬を加熱振盪する事で、反応が定量的に進行することを突き止めた。さらに、多様な芳香族ハライドと芳香族ボロン酸とのカップリングに適用し本反応の一般性を確立することができた。
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