研究課題
本申請研究は、パラジウム炭素(Pd/C)に代表される、不均一系白金族触媒による接触還元を、無溶媒条件、すなわち、固相-固相-気相反応として、さらに、鈴木-宮浦反応を無溶媒の固相-固相-固相反応として確立すべく平成21年度から平成23年度の3年間遂行した。まず無溶媒(固-固-気相)接触還元反応については、平成21~22年度までの研究で、様々な還元性官能基を持つ基質に対する適用性を確立するとともに、Pd/BaSO_4、Pd/Al_2O_3、Pd/HP20(雑誌論文(5))などのPd/C以外の不均一系白金族触媒でも固相接触還元反応が極めて効率的に進行することを示した。本法は、接触還元が溶媒を使用しない固相反応条件下で進行することから、反応装置(プラント)の小型化が可能であり、反応コストの削減に直結する。しかし、反応終了後、反応系に空気が流入した際に発火しやすい点が欠点である。本年度は「実用性の向上」に主眼を置き、発火の可能性が低いウェットタイプのPd/C(水を約50%含む)の適用性を示すとともに、活性の低下無しに触媒の回収・再利用が可能であることを明らかにした。一方、無溶媒(固相-固相-固相)鈴木-宮浦カップリング反応に関しては、平成21~22年度の検討で、Cs_2CO_3に代表される固体の無機塩基存在下、Pd/C、固体芳香族ボロン酸、そして芳香族臭素を、密栓したバイアル中加熱(80℃~100℃)条件下で振蕩するのみで、定量的に無溶媒鈴木-宮浦カップリング反応が進行することを明らかにした。本年度はこの最適反応条件を用いて、多様なアリールハライドとボロン酸のカップリングを実施し一般性を確立した。とくに、芳香族塩素やヘテロ芳香族ハライドのカップリングにも適用可能である点は特筆に値する。また上記接触還元と同様に、反応後の触媒の回収・再利用もできる。従って、プロセス化学的に実用化が見込まれる手法を提供することができた。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
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