本年度は、プロテアーゼ阻害に基づくウイルス性感染症の治療薬開発を目標として、Dアミノ酸を組み込んだRetro Inverso変換(アミノ酸配列の逆転とDアミノ酸への反転)に基づく持続性プロテアーゼ阻害剤の設計・評価を目的として以下の研究を実施した。 (a) 持続性HTLV-1プロテアーゼ阻害剤の最適化 前年度で得られた最適配置を持ったRetro Inverso型阻害剤について、構造活性相関研究を行った。このため、まず最適配置のみを選択的に構築できる立体選択的合成法を確立し、固相合成経路の確立を行った。最も構造変換が容易なN末側に構造多様性を導入し、得られた化合物について前年度で確立した方法に基づく速やかな活性評価により構造最適化を進めた。 (b) 持続性SARS 3CLプロテアーゼ阻害剤の設計・合成と構造解析 前年度の検討で最も高い阻害能を示した化合物を低分子型持続性阻害剤へ展開した。まず、前年度の検討で高い阻害活性が得られているアルデヒドペプチド誘導体を用い、前年度で得た結晶化条件をもとに阻害剤とR188I SARS 3CLプロテアーゼとの共結晶作成を順次行った。少なくとも3Å以下の分解能が得られるまでX線構造解析測定を繰り返し、原子レベルでの構造情報を取得した。得られた複合体構造をもとに構造最適化を進めるため、各サブサイトの相互作用最適化を目指した。具体的には、疎水性相互作用と水素結合形成に焦点を絞り、酵素切断近傍における相互作用解析を集中的に行った。同時に、高活性を示す低分子型阻害剤をもとに、Dアミノ酸の導入や新規scaffoldsの探索により持続性向上を図ることができる側鎖置換基の探索を行った。
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