研究概要 |
プレビタミンD骨格であるにもかかわらず、骨芽細胞(HOS)に対するオステオカルシン転写活性が活性型ビタミンD_3の1.4倍を示す14-エピ-2α-メチル-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルプレビタミンD_3(la)を見出し、その効率的合成法を確立した。すなわち、A環部をキナ酸から7位炭素を増炭してエニン体として合成し、14-エピ-CD環部は、8-ケト体の14位を塩基性条件下異性化し、これをさらにエノールトリフラートに導いた。これらをPd(II)-Cu(I)触媒を用いて薗頭カップリングし、Wilkinson触媒で2位エキソメチレン部を選択的に還元、次いでアルキン部をLindlar触媒で部分還元することによりプレビタミンD_3型とし、HPLC精製して目的とする1aを得た。2β-メチル体もHPLCによる分離過程で得た。生物活性評価を14-エピ-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルプレビタミンD_3(1)について調べるため生理的緩衝液に溶解したところ、14-エピ-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルタキステロール_3(2)への異性化を認めた。異性化の反応機構を精査したところ、酸触媒による6-7位間でのシス-トランス異性化反応であることが判明した。異性化成績体2の構造を確定するために、14-エピ-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルタキステロール_3を別途合成した。先のA環エニンからビニルスタナンへと変換し、一方14-エピ-CD環エノールトリフラートを調整し、Stilleカップリングした。両者は光学スペクトルが完全に一致し、2の構造を確定することができた。活性型ビタミンD_3とは基本的に三次元構造が異なる1は、生理的条件下で恐らく2へと構造変換されて生理活性を発現しているものと推定できる。どのように核内受容体VDRと結合するのかを、Spring-8によるVDR-2複合体のX線共結晶構造解析に成功した。これまでの常識を覆す結合様式を解明し、学術雑誌に研究成果を投稿した。
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