昨年までの研究により、ヒガンバナ科Lycoris albifloraの鱗茎より単離されたフェナンスリジン型アルカロイド(FA-1)が、HSC-2口腔がん細胞に対して培養初期の段階においてオートファジーを発現させ、このオートファジーの発現がその後のアポトーシス誘導に深く関与していることを明らかにした。そこで、FA-1の類縁体の単離と化学誘導を試み、それらの細胞毒性を評価したところ、8位/9位のメチレンジオキシ基、7位水酸基、1位/10b位間の二重結合は、いずれもFA-1の強力な細胞毒性の発現に必須であることが明らかとなった。 また、ユリ科Fritillaria meleagrisの鱗茎より10種の新規化合物を含む18種のステロイド配糖体を単離し、構造を明らかにするとともに、HL-60細胞とA549肺がん細胞に対する細胞毒性を評価した。その結果、5β-スピロスタノール配糖体とコレスタン誘導体はHL-60細胞に対してアポトーシスを誘導した。このとき、5β-スピロスタノール配糖体と接触させたHL-60細胞はsub-G1の細胞の増加が認められたが、コレスタン誘導体と接触させたHL-60細胞ではG2-M期の細胞も増加しており、両者は異なるメカニズムでHL-60細胞をアポトーシスに誘導していることが示唆された。一方、Fritillaria属植物などに特徴的に含まれる (22R)-スピロソラノール配糖体は、A549細胞をアポトーシスに誘導した。 さらに、キンポウゲ科Adonis aestivalisの種子から、4種の新規化合物を含む5種の強心ステロイド誘導体を単離した。このうち3種は、HSC-2細胞、HSC-3細胞、HSC-4細胞、HL-60細胞に対して、腫瘍細胞選択的にアポトーシスを誘導した。
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