研究概要 |
今年度は、昨年度の合成計画を続行すると共に、1-,または1,8-置換3-ベンジルアミノ-β-カルボリン誘導体の合成を新しく計画し、さらにがん細胞に特異的に発現するとされるグルコーストランスポーターによるがん細胞特異性を付与する目的で、9位にグルコースを導入することを計画した。3-ベンジルアミノ-β-カルボリン誘導体はアポトーシスを誘導することが蛍光顕微鏡観察によるクロマチンの断片化、DNAラダーの観察、FACS解析結果から推定された(Eur.J.Med.Chem.,2011,46(2),636-646)。また、フルオラスタグをもつβ-カルボリン誘導体をフルオラスレジンに坦持させて行うフルオラス固相合成法を新しく開発し、この方法によるβ-カルボリン誘導体の合成法のさらなる改良を行った。さらに、鈴木-宮浦カップリング反応を応用した、より簡便で低コストで達成できるβ-カルボリンの新規合成法を開発した。また、エリプチシン誘導体についても、β-カルボリンと同様にグルコースの導入法を検討した。これらの化合物の抗腫瘍活性を現在評価中である。 β-カルボリンがアポトーシスを誘導する機構を分子生物学的に検討した結果、α-チューブリンに作用していることがアフィニティクロマトグラフィー、TOF-MS、m-RNAの発現量の観察結果より推定された(Bioorg.Med.Chem.Lett., submitted)。α-チューブリンに作用する薬剤の報告例はこれまでになく、新しいタイプの抗腫瘍剤の開発につながると期待される。そこで、本年度新たにα-チューブリンのプロモーターアッセイを行い、プロモーター領域のおおよその見当をつけることに成功した。 最後に、昨年度に続き新しい抗腫瘍剤としての用途が期待されるピリドンおよびキノロン骨格の新規構築法を種々検討した。その結果、ピリジン環、ピリミジン環の新規構築法や、ピロール骨格の新規構築法を開発することができた(Synlett.,2011;Chem.Eur.J.,2011,accepted)。また、ピリジン誘導体の抗腫瘍活性を行い、これらの化合物のSARに一定の方向性を見いだすことができた。
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