二つのポルフィリンのmeso位を鎖状構造で連結した一連のビスポルフィリン分子の構築法の確立と、これらのビスポルフィリン分子の不斉認識能の解明を目的に本年度の研究を実施した。その結果、目的のビスポルフィリン分子が、有機亜鉛反応剤とmeso-ブロモポルフィリンとのPd触媒根岸クロスカップリング反応により得られるエステル基を持つポルフィリン亜鉛錯体から3工程で容易に構築できることを明らかにした。また、得られたビスポルフィリン分子のうち、二つのエステル基間に3個のメチレン鎖を持つものは、光学活性ジアミンをゲスト分子として容易に取り込み、ゲスト分子の不斉を反映した分散型CDスペクトルを与えることが判った。さらに、このCD強度は従来報告されているビスポルフィリンをホスト分子として用いた場合よりも2倍以上の高い強度を示すことが明らかとなった。しかし、より配位能の弱いジオール類をゲスト分子として用いた場合には、分散型CDスペクトルは得られるものの、その強度は予想よりも低かった。そこで、次年度は、アルコールなどの配位能の小さい分子であってもゲスト分子として効果的に取り込むことの出来る電子吸引性置換基をもつビスポルフィリン分子を構築し、さらにその不斉認識能の解明を通じてより汎用性の高い化合物の絶対配置決定法の確立を目指す。以上の研究成果に加えて、関連事項として、新規なポルフィリン合成素子として、二つのmeso位にホルミル基とカルバモイル基など、二つの反応性の異なるカルボニル基を持つ非対称ポルフィリンのone-pot合成法の開発に成功した。
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