研究概要 |
糖は非対称アセタール構造であるためにendo開裂とexo開裂の2種の開裂様式が存在する。糖化学においてはexo開裂については広く知られているが、一方でendo開裂については1980年代に糖加水分解酵素のメカニズムとして計算化学により提唱されて以来、1980年代後半には実験化学によりexo開裂の証拠を得る研究が数例行われた。 2,3-transカーバメート、カーボネートを持つ糖構造は弱い酸性条件において容易に異性化することをすでに見出していた。これがendo開裂によるものと推測し、還元、Friedel-Crafts反応などによりendo開裂によって生じたカチオンを捕捉することで、異性化反応がendo開裂によるものであることを示した。 2,3-transカーバメート、カーボネートを持つ糖構造はこれまでに知られているendo開裂を示す糖構造、糖ミミックよりもはるかにendo開裂をおこしやすいことを明らかにした。また、endo開裂によるアノメリ化反応が溶媒の影響を受け、アセトニトリル中において著しく加速されることを見出した。また、2,3-cisカーボネートを持つ糖構造においてはendo開裂は観測されない。2,3-transカーバメート、カーボネートを持つピラノシドは^4C_1コンフォメーションをとるが、2,3-cisカーボネートを持つピラノシドはE_2様の歪んだコンフォメーションをとる。endo開裂にはピラノシドのコンフォメーションが重要な役割を果たすことを明らかにした。また、上記の結果は計算化学によっても支持された。
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