研究概要 |
2,3-transカーバメート基を持つピラノシドは、弱い酸性条件下において、容易にβ体からα体へと異性化することを見出している。今年度は、カーバメート基窒素上の置換基、6位置換基などが、異性化反応に及ぼす影響について、系統的に検討した。その結果、カーバメート基上置換基がアセチル基の場合に、完全な異性化反応が、単糖チオグリコシド、2糖においてもおこることを見出した。計算化学により、この異性化反応のドライビング・フォースが、ピラノシドのコンフォメーションが固定される要因よりも,カーバメート基のひずみであることを明らかにした。 さらに、2,3-transカーバメート基を持つピラノシドが、アリル化、ラジカル連鎖反応などのラジカルC-グリコシル化反応において、高い1,2-cis選択性を示すことも明らかにした。C-グリコシル化反応は、1,2-cis選択性で進行することが知られているが、アミノ糖の場合には、2位アミノ基の保護基がフタルイミド基の場合には、1,2-trans体、アジド基あるいはアセトアミド基の場合には、1,2-cis体を与えることが明らかになっていた。2,3-transカーバメート基を持つピラノシドは、これまで報告されてきたアミノ保護基よりも高い1,2-cis選択性によりC-グリコシル化反応が進行することを明らかにした。カーバメート基上窒素置換基については、アセチル基が最も高い1,2-cis選択性を示す。また、6位水酸基保護基のかさ高さも1,2-cis選択性に影響を及ぼすことが明らかになった。
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