研究課題
経口投与された糖質は、消化酵素によりグルコース等の単糖に分解された後、主に小腸上皮細胞の消化管側の膜上に局在するヘキソーストランスポーターのNa+/糖共輸送体(SGLT1)を介して能動的に吸収される(血糖上昇)。さらに糖質は、小腸に存在するL細胞を刺激し、glucagon-like peptide-1(GLP-1)の血中への分泌、同GLP-1による膵臓β細胞の刺激を介して糖依存性のインスリン分泌を促進する(血糖低下、インクレチン効果)。我々は過去2年間の研究を通して、配糖体を側鎖に導入した高分子複合体がSGLT1阻害を介してin vivoにおける血糖上昇を抑制することを見出している。本年度は、これまでに合成した配糖体-高分子複合体に関して、GLP-1分泌初代培養細胞を用いて、L細胞刺激を介したGLP-1分泌促進作用の有無を検証した。その結果、末端にカルボキシル基を持つポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーにアルブチン(ARB)を結合させた複合体(PAMAM-ARB)が、ポジティブコントロールの脂肪酸や高濃度グルコースと同様にGLP-1分泌促進作用を有することが示唆された。同様の効果は、PAMAM-ARBの構成成分であるアルブチンやPAMAMデンドリマーには観察されなかった。一方、高分子をPAMAMデンドリマーからポリ(γ-グルタミン酸)に変更したとき、GLP-1分泌促進作用は消失した。昨年度の検討から、PAMAM-ARBはSGLT1阻害作用を有することが確認されている。以上、PAMAM-ARBは、SGLT1阻害作用とGLP-1分泌促進作用(L細胞刺激作用)を併せ持つ、新しいタイプの経口抗糖尿病薬のシーズとなる可能性が示された。
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Molecular Pharmaceutics
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