研究課題
当該研究は、B細胞活性化時において発現が制御されているシアル酸分子種のN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)の機能とその作用機序を明らかにする事を目的とした。現在までにNeu5Gcを含有する糖鎖はシグレックファミリーレクチンCD22/Siglec-2により高親和性に認識されることは明らかとなっていたが、Neu5Gcの機能が全てこのレクチンの作用で説明できるわけではない。研究代表者はこれまでにCMP-N-アセチルノイラミン酸水酸化酵素(Cmah)反応が、シアル酸分子種の作り分けを担うことを示してきた。そこで、CD22欠損マウス、CD22の高親和性リガンドを構成するNeu5Gc欠損マウスおよび、両者のダブルノックアウトマウスを作製し、CD22およびNeu5Gc含有糖鎖の機能がB細胞でどのような機能的重複を示すかを検証した。研究の結果、Neu5Gcとその受容体CD22は、共にB細胞活性化を制御する因子であるが、それぞれの欠損においての表現型は、相互作用を示し、部分的にオーバーラップする経路でB細胞活性化を制御することが考えられた。また、CD22を介さないNeu5Gcの機能に関してT細胞系を用いた検討を加える試みにおいては、T細胞においてもNeu5Gc欠損は、T細胞活性化を亢進したことからも、B細胞におけるCD22との部分的な表現型独立性を理解できることが分かった。研究全体を通して、これまで、CD22に対するリガンドのみの影響が強調されてきたNeu5Gcの機能であるが、本研究により、リンパ球における細胞種非依存的なNeu5Gc機能が明らかになった。Neu5Gcがヒトでも欠損しているが、これらの研究結果から、ヒトの実験動物モデルとしてマウスを使用する場合には、シアル酸分子種をヒトに似せた研究代表者らのCmah欠損マウスを使用することが必要であることが考えられた。
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