研究概要 |
本研究では,ヒトNalm-6細胞を用いたジーンターゲティング法により,さまざまなヒトDNA鎖切断修復遺伝子を系統的に破壊し,得られた変異細胞株(ノックアウト細胞)の表現型解析を詳細に行う.個々の遺伝子の機能を逆遺伝学的に解析することで,さまざまなDNA鎖切断に対する各修復経路の役割を明らかにし,ヒト細胞におけるDNA鎖切断修復機構の全体像を正確に捉えることを目標とする.今年度は,以下の3項目を中心に研究を行った.[1]ヒト遺伝子ノックアウト細胞株の系統的作製:DNA鎖切断修復に関わるヒト遺伝子を系統的にノックアウトし,ホモ変異細胞を作製した.特に,Alternative End-Joiningの実体と役割の解明を目指し,LIG4変異株やARTEMIS変異株をもとにして,さまざまな二重変異株の作製を系統的に進めた,[2]ヒト遺伝子ノックアウト細胞株の表現型の解析:得られたノックアウト細胞について,増殖速度,コロニー形成率,細胞周期分布を調べた.また,さまざまなDNA損傷に対する感受性を解析した.損傷誘発剤として,電離放射線および次の薬剤を主に使用した:過酸化水素,MMS,ブレオマイシン,ネオカルチノスタチン,カンプトテシン,エトポシド,シスプラチン.感受性試験は,コロニーアッセイ法および増殖阻害アッセイ法により行った.[3]ヒト遺伝子ノックアウト細胞株の組換え能の解析:ヒト変異細胞株におけるランダムインテグレーションとジーンターゲティングの頻度について,HPRT遺伝子座を用いて定量的に解析した,また,エンドジョイニング非依存性のランダムインテグレーション機構を明らかにするため,他のDNA ligaseやDNA損傷初期応答因子の関与についても解析を行った.
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