研究課題
(1) ストレス誘導性pseudokinase TRB3は多くのがんで高発現していることが知られており、TRB3の細胞周期への影響を検討するため、cyclin dependent kinase(CDK)の脱リン酸化・活性化をおこすphosphatase Cdc25Aのタンパク発現へのTRB3の影響を調べた。すると、通常の状態ではその発現をTRB3は負に制御し、DNA傷害時に不安定化するCdc25AをTRB3は逆に安定化させるという、二相性の制御をCdc25Aに対して行っていることを新たに見出した(Biol. Pharm. Bull.(2010))。また、TRB3は細胞周期依存的にそのタンパクの発現が変動することを見出し、これは細胞周期関連ユビキチンリガーゼの一つであるAPC/C^<Cdh1>が深く関与していることが明らかとし、これがCdc25Aの細胞周期依存的な発現変化を引き起こしている可能性を見出した(BBRC(2010))(2) マウス白色脂肪細胞株(HW11)、褐色脂肪細胞株(HB2)を用いて、脂肪細胞分化・成熟化に及ぼす抗炎症サイトカインTGFβの影響を調べたところ、いずれの細胞株ともその分化の抑制効果が見出された、その効果は特に白色脂肪細胞株で強く認められた。また、成熟した脂肪細胞株へのTGFβの効果を検討したところ、褐色脂肪細胞株はほとんど影響を受けなかったのに対し、白色脂肪細胞株では顕著な脂肪滴の減少が見られ、白色脂肪細胞の機能を特異的に制御可能であることが示唆された(in preparation)。(3) ヒト肝がん細胞株HepG2細胞を用いて、TGFβ依存的な細胞内情報伝達をTRB3は強く抑制することを見出した。この抑制効果は小胞体ストレスを細胞に加えても認められ、また、TRB3のノックダウンで減弱した。TGFβの情報伝達分子群であるSmad family分子の中で、Smad3とSmad7がTRB3と強く結合することが明らかにした。Smad7についてはこのTRB3によるTGFβシグナルの抑制機構への関与は今のところ不明であるが、Smad3についてはTRB3はリン酸化や転写活性化能には影響せず、DNAへの結合を抑制することを明らかにした(in preparation)。
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