研究概要 |
【研究の進捗状況と成果】最終年度である本年度は、(1)PLP2導入メラノーマ細胞における転移能とその下流分子の解析をすすめた。とくに、PLP2過剰発現細胞が肺への転移が亢進することがわかり、その機序についての解析すすめた。(2)JAK2点変異V617F導入細胞の異常増殖機構の解析を行った。JAK2V617F変異体は、in vivoにおいて著明な腫瘍形成を誘導したが、このシグナル系におけるJAK2下流分子の同定を行った。とくに、転写因子STAT5の恒常的な活性化が重要であり、セリン・スレオニンキナーゼAktがCREBやGSK-3βのリン酸化を誘導することにより、抗アポトーシス因子であるBcl-XLやMcl-1の発現を上昇させ、抗アポトーシス作用を示すことを明らかにした。さらに、STAT5の標的分子としてc-Mycを同定したが、c-MycはAurora Kinase(Aurka)の活性化をもたらすことがわかった。Aurkaの活性化は、JAK2V617F変異体のシスプラチン耐性に関与していることを明らかにした。なお、甘草由来のリコカルコンAはとともに、3種類のフラボノイド化合物Apigenin,Luteolin,Fisetinが、JAK2V617F変異体の増殖を抑制することを見出し、その作用機構としてNF-kB活性化を阻害することを明らかにした。 【本研究の意義と重要性】JAK2シグナルの異常は真性赤血球増加症や急性白血病の原因となることから、そのシグナル系に関わる標的分子を明らかにした。とくに、転写因子STAT5やc-Mycとその下流分子を同定した。これらの分子がJAK2V617F変異体の異常増殖の原因となること、従ってJAK2キナーゼ活性ならびにこれらの分子を標的とする阻害剤を探索することは創薬につながるものであり、阻害剤の候補化合物を探索した。
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