本年度は、代表的な脂質性生理活性物質であるプロスタグランジンE2 (PGE2)の生体内での産生と分解を総合的に理解するために、細胞内でのPGE2の不活化に関わる15-ヒドロキシPGデヒドロゲナーゼ(15-PGDH)の発現調節を検討した。まず、細胞質型PGE合成酵素(cPGES)欠損マウス肺における15-PGDHのmRNA発現をマイクロアレイ法で調べた結果、野生型マウスの肺での発現量に比べて約1/2に低下していた。また、cPGES欠損初代培養線維芽細胞を用いたノーザンブロット解析でも同様の15-PGDHの発現低下が観察され、培養上清中にPGE2の蓄積が見られた。次に、このcPGES欠損初代培養線維芽細胞に15-PGDH cDNAを遺伝子導入すると、培養上清中のPGE2濃度の低下が観察された。さらに、cPGES siRNAを導入したラット線維芽細胞株3Y1においても15-PGDHの発現低下が観察された。また、本細胞株をインターロイキン1betaで刺激すると、野生型細胞と比較して培養上清中のPGE2濃度上昇の亢進が観察された。次に、3Y1細胞に15-PGDHのプロモーター領域をルシフェラーゼcDNAの上流に導入したレポータージーンをトランスフェクションし、cPGESの強制発現によるルシフェラーゼ活性の変化を調べた。その結果、cPGESの過剰発現により15-PGDHプロモーター活性の有意な上昇を検出した。以上の解析から、PGE2の不活化の最初の段階を触媒する酵素である15-PGDHの発現調節にcPGESが関わることが示唆された。
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