研究概要 |
今年度の研究では、以下の点を詳しく調べ、新しい知見を得ることができた。 1) GPR55発現細胞に及ぼすΔ^9-テトラヒドロカンナビノール(Δ^9-THC)およびカンナビノイド受容体リガンドの影響 まず、GPR55が、マリファナの活性成分であるΔ9-THCの受容体として機能しうるかどうかを調べた。その結果、GPR55を発現させたHEK293細胞にΔ^9-THCを加えると、内在性リガンドであるLPIの場合よりは弱いものの、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇、p42/44 MAPキナーゼ(ERK)のリン酸化、RhoAの活性化などが起こることが分かった。興味深いことに、カンナビノイドCB1受容体アンタゴニストであるAM251やSR141716Aについても、LPIと同様の細胞応答が観察された。これまでin vivoなどで観察されたAM251やSR141716Aの効果は,カンナビノイドCB1受容体を阻害したことによるものと考えられてきたが、中にはGPR55アゴニストとしてのものが含まれている可能性がある。 2) GPR55との間にホモロジーがある受容体の内在性リガンドの探索 GPR35は、GPR55との間に約30%のホモロジーがある受容体である。今回の研究ではGPR35の内在性リガンドの探索を行った。その結果、LPIは内在性リガンドではなかったが、2-アシル型LPAがGPR35の内在性リガンドとして機能することを見出した。2-アシル型LPAをGPR35を発現させたHEK293細胞に作用させると、RhoAの活性化や細胞内カルシウムイオン濃度の上昇の増強が観察された。GPR35は2-アシル型LPA受容体である可能性がある。
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