GPR35はGタンパク質共役型の受容体の1つで、免疫系の細胞や神経節などに多く発現している受容体である。GPR35の内在性リガンドは不明であったが、研究代表者らは、2-アシル型のリゾボスファチジン酸(LPA)が真の内在性リガンドであるということを最近明らかにした。本年度の研究により、GPR35を発現させたHEK293細胞にマリファナの主要活性成分であるΔ^9-THCを作用させると、2-アシル型LPAの場合と同様、ERK(p42/44 MPPキナーゼ)の速やかなリン酸化が引き起こされることが明らかとなった。Δ^9-THCは、GPR35を発現させたHEK293細胞において、RhoAの活性化や、細胞の形態変化、p38甑Pキナーゼの活性化なども引き起こした。Δ9-THCに対する受容体としてはカンナビノイド受容体(CB1受容体、CB2受容体)が良く知られているが、GPR35もΔ^9-THCに対する受容体として機能している可能性がある。マリファナの作用は多彩で、カンナビノイド受容体(CB1受容体、CB2受容体)だけでは説明がつかないものもあるが、その中にはGPR35を介したものが含まれている可能性が高い。カンナビノイド受容体(CB1受容体、CB2受容体)は2-アシル型脂質の一種である2-アラキドノイルグリセロールに対する受容体であるが、2-アシル型脂質の一種である2-アシル型LPAに対する受容体であるGPR35が、Δ9-THCに対する受容体としても機能するということは、受容体の分子進化という点からみても興味深い。
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