研究課題
生体内で産み出されるアポトーシス細胞は、貪食細胞によって炎症応答を伴うことなく、速やかに除去される。一方、ネクローシス細胞が生体内に産み出されると、好中球の浸潤を伴う強い炎症応答が惹起されると考えられている。我々は、生体内で生じたアポトーシス細胞が貪食除去されずに放置されると、二次的ネクローシスに陥り、多量な好中球の浸潤を伴う強い炎症応答を惹起することを明らかにした。最近、細胞内に存在するDAMPs(damage-associated molecular patterns)と呼ばれる分子群がネクローシスすることにより細胞外に放出されると、これらの分子が自然免疫応答に何らかの影響を及ぼすことが着目されてきている。今年度は、昨年度に引き続き、炎症のときに浸潤してくる好中球内に存在するS100タンパク質に着目し、ネクローシス細胞が誘導する炎症応答におけるS100タンパク質の役割およびS100タンパク質の産生機構を調べた。S100タンパク質の産生は、単球の浸潤時期の一致することから、単球がS100タンパク質の産生に深く関わっていると予想された。そこで単球走化性因子であるMCP-1に対する抗体を用いて単球の浸潤を抑制したときのS100タンパク質の産生を調べた。その結果、S100タンパク質の産生は、抗MCP-1抗体により有意に抑制された。この結果は、ネクローシス細胞が誘発する炎症において単球が何らかの形でS100タンパク質の産生に関わっていることが明らかとなった。
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