研究課題
我々は、生体内で生じたアポトーシス細胞が貧食除去されずに放置されると、二次的ネクローシスに陥り、多量な好中球の浸潤を伴う強い炎症応答を惹起することを明らかにした。最近、細胞内に存在するDAMPs(damage-associated molecular patterns)と呼ばれる分子群がネクローシスすることにより細胞外に放出されると、これらの分子が自然免疫応答に何らかの影響を及ぼすことが着目されてきている。今年度は、昨年度に引き続きのS100A9タンパク質に関する課題に加え、S1100A8タンパク質に関して調べた。まずネクローシス細胞が誘導する炎症応答におけるS100A9タンパク質の役割およびS100A9タンパク質の産生機構を調べた。S100A9タンパク質の産生は、単球の浸潤時期の一致することから、単球がS100A9タンパク質の産生に深く関わっていると予想された。そこで単球走化性因子であるMCP-1に対する抗体を用いて単球の浸潤を抑制したときのS100A9タンパク質の産生を調べた。その結果、S100A9タンパク質の産生は、抗MCP-1抗体により有意に抑制された。この結果は、ネクローシス細胞が誘発する炎症において単球が何らかの形でS100A9タンパク質の産生に関わっていることが明らかとなった。また、S1100A8タンパク質の組み換え型タンパク質を抗原としてS1100A8タンパク質に対する抗体の樹立にも成功した。
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