C型肝炎ウィルス(HCV)は、感染細胞内にmembranous webと呼ばれる特徴的な膜構造を誘導し、これを足場としてゲノム複製複合体を形成することが示唆されている。membranous webはHCV非構造(NS)蛋白質の一つ、NS4Bにより誘導される。本研究は、NS4Bが相互作用する宿主蛋白質、脂質を探索し、それらの膜構造形成、HCV複製における機能解析を通じて、複製複合体の形成機構の手がかりを得ることを目標としている。 これまでに、HAタグ標識NS4B発現細胞を用いてin vivoクロスリンキングを行い、そのライセートを抗HA抗体で免疫沈降する方法により、分子量60KDaのNS4Bとその結合蛋白質のコンプレックスを見出している。当該結合蛋白質を同定するために、コンプレックスの大量精製を試みた。しかしながら、質量分析での同定に必要な量が得られなかった。10倍以上のさらなるスケールアップと、クロスリンク効率向上の条件検討が必要であると考えられた。 membranous web形成における脂質の関与を探る目的で、NS4B発現細胞のコレステロール含量を調べた。その結果、コントロールの細胞に比べて、コレステロール含量が2-3倍に増加していた。一方、コレステリルエステルはコントロールの70%ほどに低下していた。今後はコレステロール増加についてさらに精査するとともに、NS4Bとコレステロールとの細胞内分布の比較を行い、同脂質がweb構造の構成脂質である可能性を調べる。
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