NFATに対する特異的制御法は、薬理作用および副作用の両面において既存の免疫抑制薬を凌駕する治療法となりうる。本年度は、研究実施計画に準じ、その特異性に関わる分子内領域と特異的発現調節機構についての解析を実施した。 まず活性化分子であるNFATc2と抑制性分子であるNFATc4の種々キメラ分子を作製した。それらの発現プラスミドをJurkat細胞に遺伝子導入し、各種サイトカイン発現に与える影響を検討した。その結果、NFATc4によるサイトカイン産生抑制作用の責任領域は、N末のCRDにマップされることが明らかとなった。 次に、各NFATの部分領域とその調節分子であるカルシニューリンとの結合活性について定量的な比較検討を行った。当初計画していたALPHA法では、夾雑物の影響で正確なアフィニティーを測定することができないことが判明した。そこで、種々の分子間相互作用測定系について再度比較検討した結果、定量的免疫沈降法を用いることによって、最も信憑性の高いデータが得られることを見いだした。 また、抑制性分子NFATc4における種々のプロモーターレポーターベクターを作製し、種々の細胞でその発現調節機構を検討した。その結果、NFATc4が高発現する血管平滑筋細胞において高い転写活性が認められた。そこで現在、変異/欠失させたレポーターベクターを作製して作用検討することにより、活性中心となる調節領域の絞り込みを行っている。 以上、年度計画に準じた研究遂行により、NFATの特異性を決定する要因を分子レベルで特定する上で不可欠な成果が得られた。これらを端緒とし、平成22年度以降、さらに詳細な解析を実施する計画である。
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