本年度の研究実施計画に準じ、NFATの機能特異性に関わる分子領域と発現特異性に関わる遺伝子領域についての解析を実施した。 まず、NFATc4におけるN末のCRDをさらに細分化したサブドメインをNFATc2と交換したキメラ分子を作製して検討したところ、NFATc4によるサイトカイン産生抑制作用は、そのCRD領域全体で制御されていることが明らかとなった。 次に、前年度開発した定量的免疫沈降法でNFATのCRD領域とカルシニューリン(CN)との結合活性を詳細に比較検討したところ、これまで知られている二カ所のCN結合部位だけでなく、その中間部位も明らかにCNとの結合活性を示すことを見いだした。 また、抑制性分子NFATc4のプロモーターレポーターベクターを用いて作用検討した結果、その転写開始点より-390~-330bpの領域を欠失させることにより、転写活性が劇的に減弱することを見いだした。さらにいくつかの点変異を導入して検討し、その活性中心となる約20bpのオリゴ配列を同定できた。そこで、その配列オリゴと変異オリゴを用いて血管平滑筋細胞抽出液を免疫沈降し、共沈した蛋白をプロテオーム解析した。並行して、血管平滑筋細胞より樹立したcDNAライブラリーを、NFATc4プロモーターベクターを恒常的に導入したJurkat細胞に導入して転写活性を増強する分子をクローニングした。それらの結果、合計7種類の分子を同定できたが、各々をサブクローニングした発現ベクターをJurkat細胞に導入して強制発現させてもNFATc4の発現を増強せず、今回見いだされた分子は全て擬陽性であると結論した。 またNFATとの相対比較のため、他の転写制御因子であるZFPM1およびCtBPのTh2サイトカイン発現に与える影響を明らかにすると共に、in vivoにおける作用検討を行うためのT細胞移入マウスにおける気道炎症反応モデルについて、薬剤やノックアウトマウスを用いたプロファイリングを実施した。
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