土壌微生物「細胞性粘菌」由来の薬理活性物質DIFの研究

2009 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21590090
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 久保原 禅 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (00221937)
• 研究分担者: 小島 至 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (60143492) ; 大島 吉輝 東北大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (00111302)
• キーワード: 細胞性粘菌 / DIF / がん / 糖尿病 / 免疫

研究概要

土壌微生物である細胞性粘菌Dictyostelium discoideumは、柄と胞子から成る子実体を形成する。DIF-1は、粘菌の柄細胞分化誘導因子であると同時に、哺乳類細胞における様々な薬理活性を有する多機能分子である。我々は、粘菌におけるDIF-1の作用機序の解析と、哺乳類細胞におけるDIF-1とその誘導体の薬理作用の解析を進めている。
平成21年度の本研究において我々は;
1.D工F-1の誘導体を用いて、粘菌におけるDIF-1の分化誘導機構(および細胞死誘導機構)の解析を行った。
2.DIF-1とその類似体DIF-2は、粘菌の柄細胞分化誘導因子とされていたが、我々はDIF-1とDIF-2が粘菌の走化性運動の制御因子としても機能することを発見した。
3.Jurkat T細胞におけるConcanavalinA刺激によるInterleukin-2(IL-2)産生に対する各種DIF誘導体の効果を検討し、ある種のDIF誘導体はIL-2産生を抑制し、別の誘導体がIL-2産生を促進することを発見した。これらの成果を基に、新規免疫抑制剤と賦活剤の開発を目指している。
4.哺乳類細胞におけるDIF-1のターゲット分子として、ミトコンドリアMalate dehydrogenaseを同定した。

研究成果

• [雑誌論文] Dictyostelium differentiation-inducing factor-1 binds to mitochondrial malate dehydrogenase and inhibits its activity. (2010)
  • 著者名/発表者名: Matsuda T, Takahashi-Yanaga F, Yoshihara T, Maenaka K, Watanabe Y, Miwa Y, Morimoto S, Kubohara Y, Hirata M, Sasaguri T.
  • 雑誌名: Journal of Pharmacological Sciences 112 ページ: 320-326
  • 査読あり
• [雑誌論文] Autophagic or necrotic cell death triggered by distinct motifs of the differentiation factor DIF-1. (2009)
  • 著者名/発表者名: Luciani M-F, Kubohara Y, Kikuchi H, Oshima Y, Golstein P.
  • 雑誌名: Cell Death & Differentiation 16 ページ: 564-570
  • 査読あり
• [雑誌論文] Regulation of IL-2 production in Jurkat cells by Dictyostelium-derived factors. (2009)
  • 著者名/発表者名: Takahashi K, Murakami M, Hosaka K, Kikuchi H, Oshima Y, Kubohara Y.
  • 雑誌名: Life Sciences 85 ページ: 438-443
  • 査読あり
• [雑誌論文] Differentiation-inducing factor-1 and -2 function also as modulators for Dictyostelium chemotaxis. (2009)
  • 著者名/発表者名: kuwayama H, Kubohara Y.
  • 雑誌名: PLoS ONE 4 ページ: e6658
  • 査読あり
• [学会発表] 細胞性粘菌の分化誘導因子DIF-1とDIF-2は走化性運動の制御因子としても機能する (2010)
  • 著者名/発表者名: 桑山秀一、久保原禅
  • 学会等名: 生体運動研究班会議
  • 発表場所: 中央大学(東京)
  • 年月日: 2010-01-10
• [学会発表] 柄細胞分化誘導因子DIF-1とDIF-2は粘菌走化性運動の制御因子としても機能する (2009)
  • 著者名/発表者名: 桑山秀一、久保原禅
  • 学会等名: 第12回細胞性粘菌研究会
  • 発表場所: 山口大学(山口市)
  • 年月日: 2009-10-10
• [学会発表] Jurkat T細胞におけるInterleukin-2産生に対するDIF誘導体の効果 (2009)
  • 著者名/発表者名: 久保原禅、高橋克典、村上正巳、菊地晴久、大島吉輝
  • 学会等名: 第12回細胞性粘菌研究会
  • 発表場所: 山口大学(山口市)
  • 年月日: 2009-10-10
• [備考]
  • URL: http://www.imcr.gunma-u.ac.jp/lab/molgen/
• [産業財産権] 走化性運動制御剤 (2010)
  • 発明者名: 久保原禅、岡島史和、小町麻由美、桑山秀一、大島吉輝、菊地晴久
  • 権利者名: 久保原禅、桑山秀一、大島吉輝、菊地晴久
  • 産業財産権番号: 特許、特願2010-004319
  • 出願年月日: 2010-01-12
• [産業財産権] インターロイキン-2産生抑制剤 (2009)
  • 発明者名: 久保原禅、村上正巳、高橋克典、大島吉輝、菊地晴久
  • 権利者名: 群馬大学
  • 産業財産権番号: 特許、特願2009-112974
  • 出願年月日: 2009-05-07