研究概要 |
大脳皮質形成期の神経前駆細胞遊走におけるGPCRの機能を解析することを目的に、本年度は培養神経前駆細胞を用いてGsシグナルが細胞遊走を促進する機構を解明することに重点をおき実験を進めた。ます微小管結合タンパク質Doublecortin(DUX)に注目して解析を行った。神経前駆細胞の内在性DCXをアデノウィルスを用いてshRNAによりノックダウンし、さらに、DCXの疑似リン酸化型変異体および非リン酸化型変異体を神経前駆細胞を過剰発現させ、ボイデンチャンバー法により遊走能を評価した。その結果、野生型DCXを発現すると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤であるForskorin(Fsk)依存的な遊走促進がみられ、その効果はPKA阻害剤により抑制された。一方、非リン酸化型変異体ではFskによる遊走促進がみられなかった。疑似リン酸化型変異体はFskによる刺激がなくても遊走促進がみられ、さらにPKA阻害剤はこの促進効果を抑制しなかった。このことから、Gs、cAMP,PKAの経路によりDCXがリン酸化され、遊走を促進することが示唆された。次にDCXリン酸化の微小管における機能を解析した。その結果、PKAシグナルはDCXの微小管への親和性を減少させ、また野生型に比べ、リン酸化型変異体はチューブリン重合能が減少していることが明らかとなった。しかし、PKAシグナルによるリン酸化DCXの微小管に対する効果だけでは、遊走能促進効果が説明できず、アクチン系に対する効果を調べたところ、リン酸化DCXは、ラメリポディア形成を促進し、さらにその運動性を増加させることがわかった。
|