小児におけるてんかん患者は、記憶、注意、行動、あるいは意識などの認知機能障害や注意欠陥多動性障害の発症率が高く、てんかんに併発する精神障害をいかに防ぐかは、予防あるいは治療的にも極めて重要なことと考えられる。本研究では、ラットならびにマウスに電気痙攣またはペンチレンテトラゾールによる薬物誘発痙攣を惹起させて反復痙攣動物モデルを作製し、その精神機能と運動機能を行動薬理学的手法により評価した。まず、ラットに電気痙攣を連日負荷して強直間代性痙攣を惹起させると、長期間持続する自発運動亢進(open-field試験)と学習障害(Y-maze試験)が発生した。これらの障害は、抗てんかん薬(バルプロ酸)の前投与により痙攣を抑制することで抑制された。次に、マウスに単回投与では全般発作を示さない低用量のペンチレンテトラゾール(40mg/kg)を2日毎に反復投与して慢性のてんかん原生を獲得した「キンドリングモデル」を作製した。このキンドリングモデルでは、自発運動亢進や学習障害(Y-maze試験)はみられなかったが、協調運動障害(rota-rod試験)、不安関連行動の変動(高架式十字迷路試験)および認知機能障害(物体認識試験)が認められた。これらの障害は、ペンチレンテトラゾール最終投与の48および72時間後でも継続していた。以上の結果より、痙攣動物モデルの相違によって運動障害や精神機能障害の種類は異なるものの、様々な中枢神経の機能障害が惹起されることが明らかになった。今後は、これらの動物モデルを用いて精神機能障害の発症機序の解明を行うとともに、治療候補薬の探索を行う予定である。
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