研究課題/領域番号 |
21590102
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
石井 邦雄 北里大学, 薬学部, 教授 (90137993)
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研究分担者 |
森 麻美 北里大学, 薬学部, 助教 (80453504)
中原 努 北里大学, 薬学部, 准教授 (10296519)
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キーワード | 薬理学 / 微小循環 / 糖尿病 / 血管生物学 / 網膜 |
研究概要 |
本年度は、糖尿病時の網膜血管反応性変化のメカニズムを明らかにするため、streptozotocin(65mg/kg,i.v.)を単回投与し、かつ5%ブドウ糖水溶液を飲水として与える方法で作製した糖尿病モデルラット及び健常ラットを用いてin vivo及びin vitro薬理学的検討を行い、次のような成果を得た。 1.網膜血管におけるEDHFの実態解明:健常ラットの網膜血管において、AChによる拡張反応がP450阻害薬及びエポキシエイコサトリエン酸(EETs)阻害薬によって抑制されたことから、網膜血管におけるEDHFはEETsである可能性が示唆された。 2.網膜血管及び網膜神経における酸化ストレスマーカーの発現変動解析:網膜凍結切片を作製し、脂質過酸化マーカーである4-Hydroxy-2-nonenal(4-HNE)の発現を免疫染色法により観察したところ、糖尿病モデルラットの網膜血管及び網膜神経細胞において、健常ラットでは観察されなかった4-HNEの発現が著しく増加していた。 以上の結果から、糖尿病時には網膜血管のみならず網膜神経の酸化ストレスが亢進し、網膜循環障害及び網膜神経傷害が生じている可能性が示された。つまり、高血糖によって酸化ストレスが亢進すると、網膜血管におけるEDHFであるEETsの放出能の低下、あるいはEDHFの作用点であるBK_<Ca>チャネルの機能が障害される。それに伴い網膜血管拡張能が低下するため、網膜循環障害が起こり、網膜神経傷害を悪化させる一因となる可能性を示唆している。従って、網膜循環を改善し、かつ酸化ストレスを抑制するような薬物が、糖尿病時の網膜循環障害に対する有用な予防・治療薬となり得る。
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