研究概要 |
本研究では、脳病態時におけるエンドセリン(ET)の役割について、脳浮腫の産生に関与する因子のとの関連について研究し、平成23年度では以下の知見が得られた。 ・H22年度までの検討により、ラット脳室内へのET_B アゴニスト投与が、脳浮腫惹起因子であるVEGF-A の発現をアストロサイトにおいて増加させること、更に、この処置が血管内皮細胞およびアストロサイトのVEGF-受容体の活性化を引き起こすことを明らかにした。これらの成果は、本年度に論文公表された。 ・アストロサイトでのET によるVEGF 発現の機構を明らかにする目的で、培養アストロサイトを用いた検討を行った。その結果、ET-1 は培養アストロサイトでのVEGF-A の発現を増加させることが示された。一方、VEGFによる脳浮腫発生に対して抑制的に働くアンギオポエチン-1(ANG-1) の産生は、ET-1 処置により減少した。これら結果は、ETによるアストロサイトの刺激が、VEGF-Aの増加とANG-1 の減少の両者を介して、脳浮腫形成を促進させることを示唆する。 ・これまでに、脳血管の透過性を亢進させるケモカイン(MCP-1,CINC1)のアストロサイトでの産生について検討し、ET がそれらの産生を亢進させることを明らかにしている。ETによるケモカイン産生機構について検討し、アストロサイトのET_B 受容体の刺激が、転写因子であるSP1の活性化を引き起こすことが示された。また、ETによるMCP- およびCINC1産生は、SP1 阻害薬であるmithramycinにより抑制された。以上に結果から、ETによるアストロサイトのMCP-1 およびCINC1 産生には、SP1 の活性化が関与することが示された。
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