研究課題
【目的】哺乳動物脳における神経系幹細胞の増殖・分花は種々の内因性及び外因性因子により制御されることが知られる。当該研究者らは、成体マウス海馬の神経新生がトリメチルスズ(TMT)による海馬歯状回の神経傷害後に著しく促進されることを見出した。本研究では、TMT誘発性神経細胞傷害後の神経新生におけるNMDA受容体シグナルの役割についてインビボおよびインビトロ実験系により解析した。【方法】ddY系雄性マウスにTMT (2.8mg/kg)を腹腔内投与し、神経新生が促進されるTMT処置後2日目からNMDA受容体アンタゴニストを12時間毎に2日間投与した。また、5-bromo-2-deoxyuridine (BrdU, 50mg/kg)を同時に投与し、最終投与後12時間に灌流固定を行った。海馬切片について免疫組織化学法によりBrdU取り込みを解析した。TMT処置3日目に単離した細胞懸濁液を細胞増殖因子(bFGF、EGF)含有.DMEM/F12の無血清培地で培養した。得られたneurosphereの増殖に対するNMDA受容体アンタゴニストの影響を解析した。【結果】BrdU取り込みは、未処置動物に比べてTMT処置4日目の歯状回顆粒細胞層で著明に増加することが明らかとなった。未処置動物海馬のBrdU取り込みを抑制することなく、TMT処置動物で増加したBrdU取り込みを有意に抑制した。未処置あるいはTMT処置動物から歯状回の細胞をneurosphere法により培養したところ、いずれもnestin陽性のneurosphere形成が認められたが、neurosphere数は未処置動物よりもTMT処置動物で明らかな増加が観察された。TMT処置動物歯状回由来のneurosphereの増殖はNMDA受容体アンタゴニストにより有意に抑制された。【考察】歯状回傷害後の神経新生の促進にはNMDA受容体シグナルの活性化が関与することは示唆される。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (48件) 備考 (1件)
J.Neurosci.Res.
巻: 89 ページ: 552-561
J.Pharmacol.Sci.
巻: 115 ページ: 182-195
巻: 88 ページ: 1242-1251
Neurochem.Int.
巻: 56 ページ: 470-476
巻: 113 ページ: 267-270
J.Neurochem.
巻: 114 ページ: 1840-1851
巻: 114 ページ: 50-62
Neuroscience
巻: 172 ページ: 554-561
http://www.setsunan.ac.jp/~p-yakuri/