研究概要 |
本年度は、コレステロール(CHL)結合性のCHL依存性細胞溶解毒素(CDC)の改変体ILYpaf-SSのN末端に肺癌細胞指向性ペプチド(LTBP)を融合発現した、肺癌細胞標的化リポソーム輸送毒素LTBP-ILYpaf-SSを作成した。ILYpaf-SS変異体とは、CDCであるインターメディリシン(ILY)の膜孔形成領域にSS結合を導入して膜孔形成に必要な構造変化を拘束したドメイン1-3と、CHL結合性CDCであるS.mitis由来ヒト血小板凝集因子(Sm-hPAF)の細胞膜結合ドメイン4の融合毒素である。LTBP-ILYpaf-SSはCHL含有リポソームに結合し、SS結合を開裂するとそれを崩壊させた。蛍光色素を封入したLTBP-ILYpaf-SS結合リポソームを肺癌細胞A549及び正常線維芽細胞の共培養系に作用させると、それはA549に特異的に結合することが確認された。またリポソームを結合したA549を共焦点蛍光顕微鏡で観察したところ、リポソームが取り込まれて細胞内に蛍光色素が拡散した像も確認された。従ってLTBP-ILYpaf-SSを利用すれば、肺癌細胞特異的にリポソームを標的化し細胞内で崩壊させるドラッグデリバリーシステムを構築できることが確認された。 次に、細胞膜結合ドメインを欠き,細胞内移行ドメインとタンパク質合成阻害酵素活性ドメインからなる緑膿菌外毒素A(ΔBD-ETA)を作成した。ΔBD-ETA及び野生型ETAをA549に作用させた結果、両毒素で細胞死の誘導が確認されたが、ΔBD-ETAの活性は野生型の約1/1000程度で、使用濃度域の設定により細胞外からは細胞障害性を示さない安全なエフェクター毒素となることが判明した。しかしΔBD-ETAをリポソームへ安定に高濃度で封入する条件はまだ検討が必要であり、次年度はその改善も行い、平成22年度計画を実施する。
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