研究概要 |
病原性ウイルスの一つであるヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)はかぜ症候群の原因ウイルスであり、乳幼児の初期感染において気管支炎や肺炎などの症状を引き起こすことが分かっている。hPIV-1シアリダーゼ阻害活性発現には、2,3-不飽和シアル酸誘導体の7,8,9位のグリセロール骨格が保存領域であり、シアル酸の4,5位置換基が阻害活性に大きな影響を与えることが知られている。申請者はdiversityの高い化合物を簡便に合成できるMCR法に着目した。Cu(I)存在下、アルキン、スルフォニルアジド、アミンの3成分によるMCR反応をシアル酸誘導体に適用した結果、多彩な置換基をもつ4-スルフォニルアミジン誘導体I、イミデイト体IIが得られることを見出した(Bioorg.Med.Chem.2011,19,2418-2427)。今回、シアル酸の新規イソシアニド体とカルボニル化合物,カルボン酸,アミンの4成分からなるUgi反応を行い化合物IIIが得られることも見出した。Ugi反応をはじめとしたMcR法によるシアル酸骨格を基本としたシアリダーゼ阻害剤の合成は知られていない。合成されたIII(4種類)についてhPIV-1阻害活性を測定した。その結果、n-プロピルアミン、酢酸、ホルムアルデヒドから合成された化合物が最も高い阻害活性(IC_<50>=5.1mM)を示したが、その活性は2,3-ジデヒドロシアル酸(DANA)よりもかなり弱かった。今回の結果から、4位の置換基として疎水性で立体的に嵩高いものは、シアリダーゼとシアル酸誘導体との親和性を減じることが分かった。さらに今回の結果からシアル酸の4位の置換基はhPIV-1シアリダーゼ阻害活性の発現に大きな影響を与えることが明らかとなった。
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