研究概要 |
最近、アダマンタン骨格を含む生理活性物質が多々報告され、生体内のタンパク質はアダマンタン骨格を認識する脂溶性ポケットを有していることが示唆されている。抗アルツハイマー病(AD)薬として欧米で使用されているメマンチン(1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン)は、NMDA受容体括抗作用を有し、神経保護作用並びにパーキンソン病の改善効果を示す。一方、より強いNMDA受容体括抗作用を持つMK-801は統合失調症を引き起こすために、アルツハイマー病の治療薬として開発されるには至っていない。これまでの申請者の検討から、アダマンタンの架橋位のアミノ基が必須であり、また、架橋位のメチル基の存在により活性が上昇することが判明している。そこで、構造活性相関の詳細な検討をさらに進め、新規抗アルツハイマー薬の開発につながる基礎研究を推し進めることを目的として本研究を開始した。 今年度は、1. アダマンタンの架橋位の臭素化反応によりプロモアダマンタンを合成し、このプロモアダマンタンを利用したアミノアダマンタン合成法を確立すること、2. アミノアダマンタンの架橋位に1~3個のアルキル基を導入する手法を確立し、メマンチンとのNMDA受容体への拮抗作用の比較を行うこと、の2点に主眼をおいて検討を行った。 その結果、アダマンタンの架橋位の臭素化原応は、臭素溶媒中でアダマンタンを処理することで達成できた。反応時間により主生成物の臭素化数が変化することも明らかとなった。また、プロモアダマンタンをGrignard試薬によりアルキル化する手法や、ブロモ基を水酸基に変換後、Ritter反応を用いてアミノ基を導入する手法も確立できた。 これらの手法を用いて、アミノアダマンタンの架橋位に1~3個のメチル基を持つ化合物を合成し、NMDA受容体との結合実験の比較を行った。その結果、メマンチンが最も活性が高く、モノメチル体、トリメチル体いずれも活性は低下することが判明した。このことはアダマンタンの架橋位に2つのアルキル基の存在が不可欠であることを示している。
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