研究概要 |
昨年、抗アルツハイマー病(AD)治療薬としてNMDA受容体拮抗薬であるメマンチンおよびコリンエステラーゼ阻害薬であるガランタミン、リバスチグミンが上市され、アリセプトに加えて、抗アルツハイマー病治療薬の選択肢が増えたが、これらの薬物の中でメマンチンは中程度から重度のアルツハイマー病に適応できる唯一の薬剤である。このメマンチンに着目した。メマンチンは1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンであり、アダマンタンのブリッジヘッドにアミノ基と2個のメチル基が導入された化合物である。これまでの研究からメチル基の数を1個に減らしても3個に増やしても活性が低下すること、およびアミノ基をメチルアミノ基に変換すると活性が消失することが判明しており、活性発現にはブリッジヘッドにアミノ基と2個のアルキル基の存在が必須であることが示唆されている。そこで2個のアルキル基とアミノ基が導入された1-アミノ-3,5-ジアルキルアダマンタンの合成法を検討した。ブリッジヘッドのアルキル基導入法としてはGrignard反応の検討を行い、1-ブロモアダマンタンにRMgBrのエーテル溶液を90℃で滴下するという特殊な条件でMeMgBrとallylMgBrとの反応でメチル基とアリル基の導入が可能なことが判明した。本反応はEtMgBr,PrMgBrあるいはvinylMgBrでは反応は全く進行しなかった。導入されたアリル基を接触還元でプロピル基に変換後アミノ基を導入することによって、1-アミノ-3-メチル-5-プロピルアダマンタンの合成法を確立した。本化合物はアダマンタンのブリッジヘッドに異なる置換基を有する光学活性体のラセミ体である。このような光学活性なアダマンタンの報告例は現在までに知られていない。R体とS体の活性評価を比較したい。本化合物はアミノ基を有しているのでカンファースルホン酸のような光学活性な酸またはカルボン酸を利用した光学分割を行い、各々の活性評価が今後の課題である。
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