研究概要 |
本研究課題は、コンホメーションの変化によって生じるキラリティーである軸性キラリティーに着目し、薬物の作用発現時に生じる真に活性な構造を洞察し解明することにより、新たな生物活性物質、医薬品シードの創製をめざすものである。本年度は以下の課題(1)~(4)について主に検討した。 (1) γ-セクレターゼ阻害薬の立体化学研究及び合成研究 LY-411575の基本母核であるジベンゾアゼピノンに類似する、7, 8, 9-員環ジベンゾラクタム骨格について、それらの立体化学および物理化学的性質を明らかにした(J.Org.Chem.75, 5984-5993(2010))。 (2) バソプレッシンV_1, V_2受容体拮抗薬の立体化学の解明 バソプレッシン受容体拮抗薬として市販されているmozavaptanやlixivaptanなどが共通してもつN-アシルベンズ(ジ)アゼピン骨格の軸性キラリティーを明らかにし、活性発現に寄与する真の立体化学を初めて明らかにした(Angewandte Chemie Int.Ed.50, 3075-3079(2011))。 (3) インドメタシン類の立体化学の解明 インドメタシンの活性発現に寄与する一つのコンホメーションを明らかにした(Org.Lett.13, 760-763(2011))。 (4) ACAT阻害薬の合成と立体化学の解明 ベンゾラクタム系化合物について明らかにしてきた軸不斉構造を活用して、強いACAT阻害作用を示す化合物を見出した。活性発現には軸不斉構造が重要な役割を果たしていることおよびジベンズジアゼピン骨格の興味ある立体化学を明らかにした(投稿準備中)。
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